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ショートショート+

ショートショート+(しょーとしょーとぷらす)では、電子ショートショート作家くにさきたすくがショートショートを使って何か新しいことをできないかを模索していきます。

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「青を切れ!」 『KDP作家版 深夜の執筆60分一本勝負:お題「色」』

 『KDP作家版 深夜の執筆60分一本勝負』の参加作品です。

 

 

 

『青を切れ!』

 

「青を切れ!」
 爆弾処理のプロフェッショナルであり、『仙人』とも言われるご老体は俺の隣で怒鳴った。仙人は今まで数々の修羅場をくぐり抜けてきた。その武勇伝は爆弾処理に関わる者たち間で知れ渡っている。
 ただ俺はどうすればいいのだ。いままでに見たことのない爆弾の処理のため仙人に頼ってみたはいいが、ここまでボケているとは思わなかった。
 タイマーが刻々とカウントダウンする爆弾の前で俺はうろたえるばかりであった。
「はやく青をきれていっておろうが」
 仙人は杖を振り回す。
「しかし……」
 爆弾の蓋は既に外されていた。コードもしっかりと見えている。問題なのはそのコード。
 数十本の『青い』コードがひしめき合っていた。
「青が沢山あるんですが。水色っぽいのや濃い青もありますが」
「何を言っておる。青はひとつじゃ。一番青いやつじゃ」
「といわれましても……」
 一つ一つコードを確認していく。
 ええとこれは、青にしては濃すぎるな。紺色だろうか。それともインディゴブルーか。
 こいつは青というより、水色。スカイブルーか。
 そして、これは青紫だな。
 ああ。あったあった。これは青っぽい。これだろう。
 仙人にコードを見せてみる。
「こいつでしょうか」
 仙人は顔を赤くしている。
「違う。そんなもんじゃない。もっと青いヤツだ」
 じゃあ、これは青じゃなくて、コバルトブルーだな。
 あとは、群青色だろ?
 これは瑠璃色。
 で、プルシアンブルー。
 そして紺色に、濃紺。
 うーむ。
 青がどこにもない。
 ええっと……。
 青ってどんな色だっけ?
「大変聞きにくいのですが……」
「なんじゃ。もう時間は無いぞ」
「青ってどんな色でしょうか」
「青と言ったら青だろう。ほらそこの……」
 仙人が杖で指そうとするが、年齢のためかそれとも怒りのためか、その狙いは定まらない。
「どこですか?」
 上下左右に動かす杖の先をどうにか解読して、一本のコードにたどり着いた。
「えっと、これは……。緑ですが」
「だからさっきから何度も一番青い奴だと言っておろうが。一番若々しい色をしとるじゃろう。そんなことも分からんのか。お前もまだまだ青いの。はっはっは」
「なんだそういう事か。ボケてしまったのかと思いましたよ。はっはっは」
「こらこら何を言うか。まだまだ耄碌しておらんわい。わっはっは」

 仙人の赤い顔は収まりを見せたが、辺り一面赤に染まるのはこの一秒後の事である。