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ショートショート+(しょーとしょーとぷらす)では、電子ショートショート作家くにさきたすくがショートショートを使って何か新しいことをできないかを模索していきます。

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書評「くまのおさんぽ」

 このブログに書くことと言えば、ほぼ自分の作品に関することだが、たまには他の人が書いた作品について触れてみたいと思っていた。
 そんな折、いい作品に出会うことができたので、その書評を書くことにした。
 アマチュアでありながら、書評を書くというのは恐れ多い気持ちもある。しかし、その躊躇もこの作品の前ではどこかへ消え去ってしまった。是非この素晴らしい作品を世に広めたい。そんな気持ちから筆を執った次第である。

 本作は折本(6ページ)に全ページ鉛筆書きという挑戦的な手法が用いられている。掲載にあたって色調整を行ったため、原本とは見た目が少々変わってしまっていることをご了承いただきたい。

 

 本作は、この著者(ここでは名前は伏せさせていただきたい)の処女作である。絵と文を全て一人で書いている。そのため粗削りであるがその魅力を存分に紹介したい。

 

 

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 まずは表紙。
 この物語の主人公のくまが、ぽつんと左上に配置されている。これはおそらく、元々中央にいたくまが、次ページに向かって歩いている光景である。クマの表情を見て頂きたい。これからどんな出来事が待ち受けているのか、期待に胸を膨らませているのがありありと分かる。
 また、手前に大きく空白をとるという大胆な構図で、読者を惹き付け、ページをめくってみたいという衝動を喚起させている。

 

1~2P

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 右に絵を、左に文を配置するといういたってシンプルで読みやすい絵本である。
 絵に文字をかぶせたくない(またはその逆であるかもしれない)という著者の絵と文に対する相当なこだわりが見える。
 くまの足元に地面を描くのではなく、遠景に地平線を描き、近景にも草を二重に配置するという、奥行きを感じさせる絵だ。立体感覚に優れた描き手にしか成しえない構図である。
 まず読者が感じることとしては、この絵のくまは何をしているのかと言う事だが、古典を踏襲した「あるひ」という出だしから、簡潔に主人公の行動を描写している。出だし1ページにして、謎と答えを出すことで読者をくぎ付けにすることに成功している。

 

3~4P

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 ここで、うさぎの登場である。耳を非常に長く描き、キャラクターの描き分けが素晴らしい。
 遠景にあった地平線はこのページには無い。これは物語がこの二匹にクローズアップされたという意図的な物だ。何故クローズアップしたのかという事には、他に大きな理由が存在するのだが、それは後述する。
 余談ではあるが、初版では「うさぎ」ではなく「うさき」となっていた。読者の指摘によりそれは修正されたようだ。

 

5~6P

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 最後は怒涛の展開となる。
 そして、いつの間にか夜になっているのである。お気づきになっただろうか。1ページ目では、空に雲が浮かぶ昼の光景である。キャラクターにクローズアップして描写し、空の様子を読者に悟らせないという高等テクニックがつかわれているのだ。二匹の登場人物も、読者も、辺りが暗くなっていることに気付くことができないのである。遊んでいると時が経つのが早く、いつの間にかあたりが暗くなってしまうという幼少時代の体験を、誰もが思い出すだろう。
 主人公たちが遊び疲れているのだろうと言う事が、さっきより控えめになったウサギの耳に表れている。しかしこの二匹の表情を見て頂きたい。楽しい時間を過ごしたのだろう。すごく満足げではないだろうか。

 

 私の様なアマチュアでは、この作品の魅力について余すところなく伝えることは難しい。しかし、このような素晴らしい作品に出会えたこと、その作品に関わる文章を書くことができたというのが、なによりの喜びである。