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ショートショート+(しょーとしょーとぷらす)では、電子ショートショート作家くにさきたすくがショートショートを使って何か新しいことをできないかを模索していきます。

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未完の落選作

 第25回小説の虎の穴の課題は「変わった小説」
 自分の作品『未確定私小説』は残念ながら落ちてしまいました。「変わった小説」に取り組む自分が、その課題で最優秀賞をとるまでを書いた私小説です。
 この作品は最優秀賞を取らないと完結しない作品なので、永遠の未完となりました。

 でも、もったいないので、こっちでこっそりアップします。

 

 『未確定私小説

 シュレーディンガーの猫。あらゆる事象は観測されるまで確定しない。有名なパラドックスだ。作動するかどうか分からない毒ガス装置と一緒に箱に入れられた猫は、蓋を開けられるまで生と死の重なり合った状態にある。
 公募に関してもそうだ。紙面を開き、入選者の名前を確認するまでは、自分の作品が評価すべきものかどうかは確定しない。失望と希望の重なり合った状態にある。名前を見つけられなかった時、初めて失望が襲ってくる。名前が見つかれば、歓喜となる。掌編小説の公募である「小説の虎の穴」、私はそこに作品を送り続けてきて、多くの失望を味わった。佳作に引っかかれば、歓喜した。その歓喜は次の創作意欲へとつながり、調子に乗ってブログを始めたりもした。
 ただ、今回の課題「変わった小説」は、大いに私を悩ませた。言葉遊びから話を作る自分の作風は変わった小説とは言えない。今までも人とは被らないアイデアを考えてきたつもりだが、今回は全ての応募作品が個性的な作品となる。その中で自分の作品に注目させることなど出来るだろうか。
 いや、逆に言えば、これは自分のテリトリーなのかもしれない。無理矢理そう思う事にした。創作には根拠のない自信が必要である。公募を続けて学んだ事の一つだ。
 私はあれこれと思いを巡らせて、一つの結論に至った――まずは、自分が変わるべきだ。
 虎の穴に応募を続けてはいるが、正直言って最優秀賞を狙った作品は書いたことが無い。――佳作に選ばれたら万々歳、落ちてもネットで公開して誰かに読んでもらえればいい――これではいけない。最優秀賞を獲るつもりで作品を書くという意識を持つべきだ。
 それだけでは変化は足りない。加えて、今まで自分が書いたことのない物を書くことにした。毎月出される課題に取り組んで、様々なタイプの掌編を書いた。しかし、まだ書いたことのないジャンルが一つだけある。
 私小説だ。
 私自身を題材とする作品を書こう。おそらく私小説を送る応募者は少ないだろう。私小説を送ったという事だけで、多少の差をつけられるはず。ただし普通の私小説ではだめだ。何かいいアイデアは無いだろうか。
 定義によれば、私小説はフィクションである。ただ現実を書いただけでは、単なるエッセイに過ぎない。虚と実の間で、うまくバランスをとりながら書くことが必要だ。
 ここで、一つのアイデアがひらめいた。
 私はパソコンに向かって執筆を開始した。ストーリーは既に頭の中で最後まで出来上がっている。猛スピードで執筆を進めた。
 出来上がると読み直し、誤字脱字をチェックする。数日開け、読み直し、表現を直す。それを繰り返した後、クリスマスイブの夜に、この「未確定私小説」をメールで送信した。
 そう、書きながら送ることなど不可能だ。私は未来を書いた。この時点で、フィクションである。エッセイではなくなった。
 それから結果発表までの間、私の現実は私の小説に縛られることになった。
 年が明け、私は新年の抱負をブログで語った。「最優秀賞を目指す」と。しかしこの結果が歓喜となるのか失望となるのかも、今のところは未確定だ。フィクションとなるのかノンフィクションとなるのかも。
 未確定な世界では、感情が不安定になる。こんな裏技的な書き方が許されるのだろうか。もっと変わったアイデアが他にもあったかもしれない。タイトルはこれで良かったのだろうか。ネガティブイメージが次から次へと襲ってくる。
 私は首を振って、次の課題「スケッチ・コメディ」へと頭を切り替えた。コメディこそが、言葉遊び好きな自分のテリトリーだ。根拠のない自信を持ちながら――
 そして結果発表の時。
 仕事中にこっそりと、公募ガイド発表ブログをチェックする。佳作の作品が発表されていた。自分の名前は無い。当然のことだ。最優秀賞をとる事だけを考えて書いた作品であるし、最優秀賞をとらなければ成立しない作品なのだから。結果は0か1。それ以外は無い。
 私は普段の仕事を終えると、期待に胸を高鳴らせながら書店へと急いだ。店へ入ると、最短ルートで「公募ガイド」の棚まで進む。雑誌を手に取り、はやる気持ちを押さえながらパラパラとページをめくる。「小説の虎の穴」のロゴが目に飛び込んでくる。すぐさま目を滑らせる。目に入ったのは、

 第25回最優秀賞
 未確定私小説  くにさきたすく

 この観測によって事象は確定した。
 私の小説は、見事にフィクションからノンフィクションへと成り「変わった」のである。

(了)

 

 未来を予測してその通りになる小説って今までに無いかなぁと思ったのです。

 で、送ってしまった後で知ったのですが、最優秀賞に選ばれると事前に連絡があるようですね。加えて、発表ブログでも最優秀賞の名前が載るようになったみたいです。なので、フィクションにしかなりようがないですね。う~~。(>_<) 失敗!

 

 

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