読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ショートショート+

ショートショート+(しょーとしょーとぷらす)では、電子ショートショート作家くにさきたすくがショートショートを使って何か新しいことをできないかを模索していきます。

BCCKS、Kindle、kobo等にて電子ショートショート集『空論オンパレード』『ポンコツ×ショート』『ハモノづくし』販売中!
LINEスタンプ『原稿うさぎ』『アミドさん』販売中!

チキンライス

+自作

チキンライス

「今日はチキンライスよ」

 と、妻からメールが来た。
 一瞬にして体中の血の気が引いていった。早く帰らなければ大変なことになる。仕事を早めに切り上げて、家へと急いだ。
 妻の作ったチキンライスは食べたことが無い。ということは、初めて作るということになる。初めて作るということは、何が出来上がるかわからないということなのだ。
 すっかり忘れていたが今日はクリスマス。町はクリスマスカラーのお祭りムードだ。こういう時こそ気を付けなければならないのだ。張り切ってろくなことにならない。


 家に着いて、ダイニングに一直線。食卓を見ると、赤い物にまみれた何かが皿の上に乗っていた。
 「クリスマスといえばチキンでしょ」
 私が知っているチキンというのは、鶏肉のことだ。今ここにあるのは白い羽毛に赤いトサカというおめでたい色のコントラストのアレだ。鶏肉ではなく「鶏」が、皿の上に横たわっている。大量のケチャップライスによって清められているようだ。クリスマスにこのような儀式があっただろうか。
 なぜか横にはマヨネーズまみれのブロッコリーがそびえ立っている。
 「クリスマスっぽいでしょう」
 妻はそう言った。
 クリスマスツリーに見立てたのだろうが、直立不動のブロッコリーは見たことが無い。うまくたてたものだ。こういう器用さを他に使ってほしい。
 「雪が積もっているみたいでしょう」
 なるほど、ブロッコリーにふんだんにかけられているマヨネーズはそういうことか。しかし、マヨネーズの中に潜んでいるチョコチップと金平糖という脅威を私は見逃さなかった。クリスマスツリーには近づいているが、食べ物からは遠ざかっている。

 突然、鶏がバサバサと羽をはばたかせて起き上がった。ケチャップライスが周囲に飛び散った。
「あ、起きちゃった。お酒が足らなかったのかな」
 酒で酔いつぶれていたらしい。
 鶏は何が起きているのか解らないといった表情。鶏に共感するのは一生に一度のことだろう。そうあって欲しい。
 鶏は三歩ほど歩いて、ケチャップライスをつつき始めた。つらい出来事を忘れてしまうということは非常に大切なことだ。

 とりあえず食べられそうなものだけ食べる覚悟を決めた。ケチャップライスは鶏が食べていたのだから大丈夫だろう。ブロッコリーに関しては、鶏を見習って食べないでおこう。


 その次の日から、鶏のおかげで私は大変早起きになった。
 非常に健康的な日々。
 正月もあまり張り切らないように、うまく誘導して乗り切った。
 普段の生活に戻り、あの惨事を忘れかけたころに、妻からメールが来た。

「今日は牛丼よ」

全力疾走

全力疾走